クリスタルグラス(Nishida)

 

若かりし頃、バイトをしながら、色々な現場に行く派遣もやっていたのですが、 

数ある現場の中でも「行きたい行きたい」とリクエストし続けたHOYAクリスタル。 

メガネやカメラのレンズで有名、といえばHOYAをご存知の方も多いハズ。 

派遣先は、クリスタル食器やグラスを製造販売する工場です。 

 

私の母はお酒を飲まないけれど、実家の茶箪笥には飾っているだけのワイングラス、

シャンパングラス、ロックグラス、タンブラーなどなど、ずらりと並んでいます。 

子どもながらに、絶対触ってはいけないと思うような綺麗なグラス達。 

いつのまにか私もグラスに魅了されていました。 

 

そして製造工場に行けるなんて夢のよう。初日は社会科見学にでも行くような

気分でしたが、作業はコンベアに流れてくる製品の梱包という地味な作業が終日。 

それでも製品を間近に見られて楽しくて仕方ありませんでした。

 

しばらく働かせていただくうちに、製造過程の工場見学をして、

実際にグラスに触れられる作業や、最終的には責任重大な検査員まで

やらせていただきました。敷地内にある販売所にもよく足を運び、

実際に自分が触れた商品から、職人さんの手作りの商品などを眺めたりもしていました。 

 

そんな私を知ってか知らずか、ある日、

送迎バスでいつも一緒になるガラス職人さんに グラスを二ついただきました。 

絶対にコンベアには流れて来ない、職人さんによる手作り。

色もカットも信じられないくらい美しいグラス。しかもサイン入り。

ほんとに嬉しかったなぁー。宝物です。 

 

その後しばらくしてクリスタル事業は終了してしまったのですが、 

そのグラスは今でも一度も使わず、実家の茶箪笥に木箱のまま飾ってあります。 

実家に帰る度に使おうか迷うのですが、

もし割っちゃったらと思うと結局眺めるだけ(笑) 

 

こんな話をしたのは、父の日にグラスをプレゼントしようかと

ネットで検索していたから。でもちょっと後悔しています。

とんでもない価格でした。

 

子どもが大きくなって、ゆっくり晩酌ができるようになったら、 

いつかそのグラスでお酒を飲みたいな。

 

                     END