怯えながら (井手)

 

昨年、100歳以上が6万人を超えたという。

 

この数字は年々増えていくだろう。

 

もう100歳は夢じゃない。

 

超高齢化社会である。

 

 

 

しかし、これは本当に幸せなのか?

 

 

 

人類の歴史の中で、そうそう叶わなかったからこそ人々は

 

長生きをしたい、家族皆で長生きできたら…という夢を描いていた。

 

だが、現実にそうなりつつある今、

 

それは希望に溢れた手に届く「夢」ではなく、

 

むしろ「怯え(おびえ)」だ。

 

 

 

 

トイレや階段に手すりが無い。

 

車椅子で何処でも自由に行ける、のはまだまだ先のことだ。

 

生きてはいるけど、膝や腰は若い時とは随分違う。

 

いずれ疾患は体全体に広がっていくだろう。

 

 

 

老若男女の「老」が長すぎるのである。

 

 

 

嘗て、平均寿命が短かった頃、100歳まで生きる人は稀で

 

現代のように「長期に亘って」老後の苦しみを経験する人は少なかった。

 

が、今は丸で違う。

 

古より人々の夢であった長寿が、

 

長寿であるために待っている長い苦しみに怯えて生活するのだ。

 

 

 

生身の体を持っている限り「老苦」に向き合わなければならない。

 

 

 

長生きに苦しむ時代である。