葬祭ディレクター技能審査受験対策講座の為の模擬問題作成の中で、
大変反省をしなければならない発見をしてしまった話。
キッカケは我が優秀な上司、NISHIDA女史。
いつも厳しく(想像以上です)フォローしてもらっているのだが、
今回の問題提起は何げないだけに調べてビックリ…凄かった。
「これ見てください」
と渡されたのは1枚の紙。

私は神道の問題作りの際「生饌と常饌」の違いを基本的設問にしてあり、
この基本的設問は過去にも出題されたことがあるのでチェックもしていなかった。
因みに解説を加えると、神葬祭における神饌物とは、神に捧げる食べ物の総称。
それを、大雑把に加工された食品かそうでない食品かで分類し、
加工されていない食品を「生饌」…塩・水・洗米など(酒は諸説あり)、
加工された食品を「常饌」と呼んでいるのだが、注釈を付けるなら、
故人が生前好んでいた食べ物を「常饌」と呼び、「生饌」と「常饌」お供えするのだ。
これに彼女は疑問符を投げかけた。
恐らく、相当下調べをして、かなり自信があるときの彼女のやり方である。
「これ、神葬祭で本当に常饌て言いますか?」
来たーっ!!
(怖いぞーーゾクゾクする)
今まで、疑ったこともなかった。

そこで、いろいろ議論しても始まらないから神社本庁に電話した。
自分の立場などの事情を言ってから質問する。
「神葬祭における神饌物について、教えていただきたいのですが…」
「はい、それでは担当者にお繋ぎいたします」
担当者に変わっていただく。
率直に質問をぶつけてみた。
「生饌は分かりますけど、常饌って何ですか? どういう字を書くのでしょうか?」
私は説明する。
「常饌…その言葉、今まで聞いたことがありません」
「えっ…もう青天の霹靂である!」
「それを言うなら、熟饌ですね」
「熟しているの字を使って、熟饌ですね」
(NISHIDA女史の言うとおりだ)
「ありがとうございました」
まだまだ、もう一つ裏を取りたい。
次に、埼玉県の神社庁に電話した。
質問内容は同じ。
電話に変わっていただいた担当者も同じ意見、そして、ちょっとお待ちください。
といって、更に別な方と話を。
「お電話変わりました、私は神饌物の研究を専門にしております○○です」
おう、何と偶然、そして親切。(ありがたい)
彼が云うには、全国色んな地域でも「常饌」という言葉は聞いたことがない、
と興味津々で逆に取材を受ける形となった…という顛末である。
そこで「常饌」で広辞苑を紐解くと…日常の食膳とある。
(本来なら、裏取りの前に広辞苑で調べるのが最低限なのである)
神道の言葉ではなかったのか。
因みに、神道では「丸物神饌または生饌」に対して「調理神饌または熟饌」
という言い方が一般的であるらしい。
非常に勉強になったが、講師としては大変恥ずかしい。
心を入れ直して学び直します。
神社本庁、埼玉県の神社庁の皆様、ありがとうございました。
【おまけ】神社本庁のHPより
神饌とは、御饌(みけ)とも言って、お祭りなどで神様に献上するお食事のことです。神様にお食事を差し上げておもてなしををして、そのお下がりを参列した人たちでいただく行為・「神人共食」(しんじんきょうしょく)が、日本の祭りの特徴であるとも言われています。