児童福祉法を里親の視点で見て (井手)

 

 

 

日本では実の家庭で育つことのできない子どもたちが45,000人以上います。

 

国際条約である「子どもの権利条約」において、

 

すべての子どもたちは温かい家庭で育つ権利があると謳われています。

 

里親は、こうした事情の子どもたちを家族の一員として迎えて養育しています。

 

 

 

(餅つき大会より)

 

 

 

先日、里親登録の更新のため、県が主催する養育里親研修会に参加しました。

 

10時に集合~昼食後~1615分までの研修会です。

 

「あ~1日が長い~」と家内はブツブツ言っております。

 

朝からお弁当の準備も(家に残る子供の分も)あり少し大変だったのかもしれません。

 

今回の研修会は5年に1度、県内各地で開催される研修会のいずれかに参加しなければならず、

 

里親登録更新のためです。自動車免許の更新と同じようなものですかね。

 

新しく変わった法整備や社会状況の変化などを学びながら、

 

大学の先生の講座を受講する、そんな感じでしょうか。

 

 

 

法整備については、担当省庁が厚生労働省ですから葬祭事業と同じです。

 

始まりは昭和23年、GHQに先導されるような形で児童福祉法が施行。

 

(占領下の沖縄で施行されたのがキッカケ…因みに沖縄の本土復帰は昭和47年)

 

今年で70年が経過したことになります。

 

当時は戦災孤児が、その多くを占めました。

 

その頃の里親委託率は10にも達していません。

 

 

 

昭和63年、特別養子縁組制度が施行されます。

 

一般の養子縁組と特別養子縁組がよく混同されるのですが、

 

養子縁組は、養子先の親も本来の親も、どちらも親という関係性は維持したままです。

 

特別養子縁組では、本来の親との関係は成立しませんので、実子と全く同じ扱いです。

 

相続の控除の問題で、実子が1人いたら養子は1人までという…養子が何人いても相続は可能だが控除の数には限りがある…という場合の養子には、特別養子は当たりません。

 

 

 

平成14年、里親制度改正(この後、社会情勢の変化などに応じて何度も改正)。

 

この時「里親の認定等に関する省令」及び「里親が行う養育に関する最低基準」を制定。

 

そして里親を「養育里親」「専門里親」「親族里親」「短期里親」の4類型に分け、

 

里親支援事業(研修・養育相談・一時的休息の援助など)が実施されます。

 

今回受けた研修会もこの一環あります。

 

 

 

その後、平成16年児童福祉法改正。

 

子供子育て応援プランが発表され、里親委託率15%を目標とされ、様々な支援事業も追加されました。そして平成20年、更なる児童福祉法改正と里親制度の充実が謳われ、里親制度が充実していきます。

 

 

 

平成27年、少子化社会対策大綱で里親委託率を平成31年(来年)度には22%を目標

 

翌平成28年、児童福祉法改正。

 

児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合は、児童が「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続的に養育されるよう…と明記されるのですがポイントは、「家庭における養育環境と同様の養育環境」の中で「良好な家庭的環境」とは…具体的には、里親家庭またはファミリーホームでも小規模で家庭に近い環境を指す、としております。そこで里親の普及啓発から里親の選定など、一貫した里親支援を目指し、結果、里親委託率1/3を目標と定めました。

 

 

 

里親委託率でみると、スタートした70年前は10にも満たない。

 

それが、目標数値ではありますが、平成16年の改正で15、平成27年には22

 

28年には1/3を目標としています。

 

そして本年8月、新たな社会的養育の在り方に関する検討会が取りまとめた「新しい社会的養育ビジョン」では、里親委託率の目標を75%とすることなどが提言されました。一人でも多くの子どもたちが家庭で育つことができるために、私たち里親の果たす役割は一段と高まっています。

 

 

このように法整備の点から70年の歴史をざっと眺めても、養育里親の重要性は増すばかりです。しかし日本の社会的養護は、まだまだ里親委託が17.5%しかなく施設養護が多くを占めています。施設養護の問題点は、乳児は乳児院、幼児以降は養護施設等と、安定した一貫養護に欠ける点が大きいのです(児童心理学からも同様のことが言えるでしょう)。

 

 

 

 

【参考】

 

東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科・鈴木宗之教授のテキストより引用

 

 

 

里親委託率の過去10年の増加幅の大きい自治体

 

 

増加幅

1828比較

里親委託率

平成18年度末

平成28年度末

1

さいたま市 

27.6%増加

6.3

33.9

2

静岡市

27.1%増加

18.5

45.5

3

福岡市

27.1%増加

12.6

39.7

4

大分県

19.7%増加

10.9

30.6

5

富山県

17.2%増加

5.6

22.8

6

滋賀県

16.1%増加

23.2

39.3

7

佐賀県

15.8%増加

3.9

19.7

8

岡山県

15.3%増加

5.4

20.6

9

札幌市

15.2%増加

9.9

25.1

10

和歌山県

15.2%増加

3.2

18.4

           

 

 

 

 

徐々にではありますが、里親委託率は右肩上がりです。

 

 

 

日々の暮らしの中で、地域の中で、子どもたちは成長していきます。

 

誕生日を家族で祝い、運動会などの行事では家族や地域の皆さんの応援の中で活躍します。多くの人々との関わりを通じて一人ひとりの個性が大切にされ、期待され、信頼されて成長していきます。誰かに期待される、信頼されるというのは、とても大きなことです。やがて大人になり、今度は自分が大切な人を守る側になってくれると願っています。子どもたちの笑顔と成長から、人と人の信頼の絆の大切さを教えてもらっています。

 

 

 

長―い1日が終わりました。

 

疲れました。

 

最近禁酒をしていましたが、今日はぐっすり眠るためにも呑みます。

 

では。