3月18日の朝日デジタルの記事です。
あれからひと月以上経ち、状況は刻々と変化していると思われるが、
現在、専門家会議のメンバーはどのようにお考えなのか…知りたい。
では、【3月18日】の記事を。
新型コロナウイルス感染症に関し、首相が「緊急事態」を宣言できる改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が成立した。だが、もともとの特措法制定時に議論の中核にいて、今も政府の専門家会議に名を連ねる岡部信彦・川崎市健康安全研究所長(73)は現時点での宣言に極めて否定的だ。なぜか。現状の課題とともに聞いた。
日本はくすぶり状態
――特措法改正で、新型コロナでも首相が「緊急事態」を宣言できるようになりました。
「『法律ができあがったから、この病気ですぐ宣言しよう』ということには反対です。宣言は伝家の宝刀であって、そんなに簡単に抜くようなものではありません」
――2012年施行の元の特措法制定に向けて議論をまとめられた立場ですが、なぜですか。
「新型コロナはそこまでのものではないと考えているからです。新型インフル等特措法に『等(とう)』を入れることには私も強く賛成しました。新型インフルだけでなく、新しくて重症で広がりやすい病気の場合にも、応用として使えるようにしておいた方がいいと考えたからです。しかし、そこで想定した新感染症は、感染症法での1類感染症(エボラ出血熱など)並みの極めて危険なものです」
「緊急事態宣言を出せば、私権制限などで対策の幅が広がる半面、社会の日常的な活動を止めてしまうと副作用も大きくなります。致死率が5%、10%を超える1類感染症並みであればやむを得ませんが、新型コロナは指定感染症で2類相当とされました」
――しかし、世界で患者が急増し、イタリアなどは致死率も相当高く見えます。
「感染者数の増加を見ると多くの人が『自分もかかるのではないか』と不安になりますが、退院した人が増えていることにも目を向けてほしいのです。致死率を考える際は、感染しても症状が出ない人やごく軽く済む人もいることを計算に入れる必要があります」
「私は医療体制がある程度保たれていれば、致死率はそんなに高くならないのではと思っています。重症になる人ができるだけきちんとした医療を受けられるようにしておくことが大事で、それができれば日本での致死率は1%前後で収まるのではないでしょうか」
――恐れすぎですか。
「言い方が難しいのですが、日本では緊急事態宣言を出したり、社会が恐れおののいたりするようなものではないという思いは、比較的早い段階から変わっていません。だからといって、放っておいていいわけではない。患者が増えれば重症者も増えるので、感染拡大をできるだけ抑えて重症者を救うことに注力すべきです」
「日本は現在くすぶり状態だと思います。イタリアはその段階で気づかず一気に感染が広がったのだと見ていますが、まだよく分かりません」
――とはいえ、緊急事態宣言の法的根拠はできました。
「宣言を出すかどうかは首相が一人で決めるのではなく、諮問委員会を設置して、医学的な議論を踏まえてもらわなければいけません。本当に広がりやすいのか、重症度はどの辺にあるのか、社会・経済的な低迷とのバランスはどうか、慎重な検討が必要です」
「宣言する場合は、どういう状態になったらやめるかも議論したうえで出すべきだと思います。新型コロナを改正特措法の対象にする期間は最長2年とされましたが、重症度などからみて、そこまでする必然性はなくなったと判断できれば、2年を待つことなく直ちにやめるべきです」
休校のよしあし「聞いてくれたら」
――安倍首相は2月26日にイベントの自粛、翌27日に全国一斉休校を要請しました。専門家会議には相談がなかったそうですね。
「どちらも専門家会議からは提言していません。休校に関してはもし学校で流行したらどうするかという意見交換は当然していましたが、全国一斉休校についてどう考えるかといった諮問はありませんでした。09年の新型インフルでは、インフルは一般に子どもの感染率が高く、また感染者も生徒であったため、大阪府と兵庫県で一斉休校をしました。ですが今回は患者層も重症度も異なります。メリット、デメリットについて、専門家に聞いてくれたらと思いました」
――安倍首相は、専門家会議が2月24日の見解で「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」としたことを要請の根拠と述べましたが。
「瀬戸際という言葉は注意喚起という意味では私もいいなと思ったのですが、私たちの思いとは違って、1~2週間うんと我慢すれば全部収まると一般の人に誤解されてしまったようです。専門家会議の考えは、このままで感染者数が急速に増えるか、何か対応することによって停滞あるいは増加をなだらかにできるかの見極めの時期というイメージでした」
――広範なイベント自粛や休校は効果がありますか。
「むだだったということはなく、公衆衛生上の効果は必ずあります。問題は、子どもたちの健康はもちろんですが、社会・経済的な影響とのバランスです。経済的損失を考えて何もしなければ感染者が増えますが、医学的な観点だけで決めてもだめなのです」
「警戒感が広まったという面ではいいのだけど、人々の不安を高めた問題もあります。うちの妻でさえ『大丈夫なの?』となって、説明するのにものすごく時間がかかりました。不安が心に大きな影響を及ぼす人もいます」
――新型コロナは人によってリスク評価がずいぶん違うように思います。岡部さんは全体の致死率を中心に重症度を見ておられますが、高齢者が重症化・死亡する率は結構高い。比較的高齢だったり持病があったりする人は「とても怖い病気」と感じているのではないですか。
「それはあるかも知れません。私も高齢者ですし……。しかし、もともとが小児科医なので、将来のある若い人も含めて次々に死んでしまうような感染症こそ重大だと考えているのです」
「新型コロナは幸い8割ぐらいは普通の風邪同様3、4日で治ります。高齢者は季節性インフルでも普通の風邪でも肺炎などになりやすいので、この間に悪くなったり長引いたりする人が要注意です。そうした人の重症化を食い止め、救う体制が必要です」
――リスク評価は専門家でも意見は分かれるのでは?
「もちろん専門家会議でも意見には幅があります。それほど大きくはありませんが。足して2で割るということではなく、データに基づいて、いろいろな意見を検討しつつ、最終的には一つの方向性を出していかなければならないと考えています」
――と言うと?
「この病気に対する医学的な向き合い方、ポリシーですね。無症状の人からうつったという論文も出てきているので、パーフェクトな『封じ込め』は不可能です。それでも社会活動を止めて『封じ込め』を追求するのか、ある程度の流行を前提に重症者・死亡者数の減少、最小の社会的被害に抑える方向にかじを切るのか、です。深い議論が必要だと思います」
もっと情報の分析と発信を
――ところで、「日本は検査を絞って感染者数を少なく見せかけているのではないか」といった疑念が内外にあります。
「それは誤解です。もし実際の感染者がずっと多かったら、原因不明の肺炎患者が増えてくるはずです。医療機関が緊張して診察している中で、そうした話、数字は出てきていません。それも隠したら疑心暗鬼を呼んで中国・武漢の二の舞いになります」
――検査を希望してもなかなか受けられないことが、疑念を生んでいる面もあるようです。
「国立感染症研究所や、私のところのような研究所も含めた各地の衛生研究所は一生懸命検査しています。こうした高精度の検査とは別に、スクリーニング的な検査は民間でもっと広く実施すべきだと言ってきました」
「日本ではインフルの検査が広く実施されているので、検査で白黒つけたいと思う心理は止められません。新しいウイルスだから検査はまだ簡単ではありません。感染初期では陰性に出ることも多く、油断すれば感染を広げるかも知れません。そして、残念ながらインフルと違って、陽性とわかっても特別な治療法が現段階ではありません。検査の限界は知っておいてください」
――長年、日本の感染症対策に携わってきて、新型コロナの流行の特徴は何ですか。
「致死率約10%とされる03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の時は病原体がわかるまで数カ月かかり、原因不明の致死率の高い病気として心底怖く思いました。今回はウイルスが早く見つかり、すぐに公開された塩基配列を使って、世界各地・日本全国でPCR検査も速やかにできるようになりました」
「その割に、中国現地の臨床情報が分からず、じりじりしました。日本から調査に人を出すべきだと思いましたし、世界保健機関(WHO)の現地調査も遅かった。そのうちに医学論文やネット情報が大量に出てきましたが、確かなことはなかなか分かりませんでした」
――中国政府が武漢封鎖などの強硬手段を使い、その後の各国の対策に影響を及ぼしたようです。
「ずいぶん古典的なことをしたな、と思いました。国内での封じ込め、日本を含む海外への感染拡大を抑える意味はありましたが、とても日本の社会体制でできることではないと思いました。日本への侵入は検疫で食い止められると考えた人もいましたが、私は絶対無理だと言っていました。感染症の侵入をゼロにすることは、不可能に近いことです。潜伏期間が長く、症状がなかったり軽かったりする人も多いと、なおさらです」
――09年の新型インフルの後、「水際対策という用語は、外からの侵入をまさに水際で完璧に防ぐと誤解される」「休校やイベント自粛の要請については社会的・経済的影響を勘案すべきだ」などと総括する報告書がまとめられていますが、そうした過去の教訓や専門家の知識がいかされていないように感じます。
「今回も同じような総括になりそうですね。専門家会議の設置が遅く、いずれ入ってくることを前提に、国民に説明したり国内対策を準備したりという部分が残念ながら、新たな病気への対応として欠けていたと思います」
「国会議員は入れ替わり、行政官も頻繁に異動します。ただ、あの時の反省を凝縮したのが新型インフル等の行動計画で、国も自治体も持っている。それを土台に応用問題で対応できるのでは、と言ってきました。『等に新型コロナは含まれる、含まれない』といった議論で、なかなか進まなかったのは残念です」
「ネットで情報が飛び交い、誰の言っていることが正しいのか分からなくなったことも、人々の不安を高めています。かと言って、ネットを規制することもできません。これも総括報告書にありますが、米疾病対策センター(CDC)のようにいつも情報を集め分析し、速やかに信頼できる情報を発信するという機関の充実がますます重要です」(聞き手・大牟田透 様)
◇
1946年生まれ。WHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課長、国立感染症研究所感染症情報センター長などを経て、現職。
都道府県などによる相談窓口
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/corona_news.html
以上。

なるほど、確かに冷静に対処しているとは思う。
しかし、その記事から1か月以上が過ぎた。
感染の状況は諸外国に比して緩やかではあるけれども、
いつ爆発するか分からない、そんな状況ではないのだろうか。
手遅れになっては絶対だめだ。
判断の遅れが多くの犠牲者を出すとなれば、現状を見て熟慮して欲しい。
医師会の現場の声も反映しなければ、医療がパンクする。
大丈夫か?
比較するのはおかしいけれど、
原発は絶対安全だと言い切っていた専門家たちは、
何の責任も取らずに、犠牲者だけを残して姿を消した。
専門家…専門家なんだから…ホントに頼みます。
では